医師バイトの落とし穴。『交通費込み』の真実を知っていますか?

皆さんは医師の非常勤やスポットなどのバイトを求人サイトで探す時、どのような箇所をみていますか?
業務内容や勤務時間はもちろん大切ですが、やはりまず最初に「給与額」に目がいくという方が多いのではないでしょうか。

そして、その下に交通費込み」や「交通費別途支給といった記載があっても、給与が高ければ深くは考えずに応募してしまう。
そんな方も少なくないと思います。実を言うと、私自身がまさにそうでした。

医師バイトでは給与が高額になりやすいため、数千円程度の交通費だと相対的に小さく見えてしまいがちです。
しかしそこには、実は見逃しがちな「手取り額の落とし穴」が潜んでいます。

今回は、そんな給与に大きく影響する「交通費」について取り上げます。
さらに、交通費込みの案件でもお得になる裏技も詳しく解説しますのでこれからバイトを探す予定のある方などはぜひご一読ください。

目次

交通費込みの案件が損になる理由

医師のアルバイト募集でよくあるのが、「日給10万円(交通費込み)」という案件です。

これと反対に「日給9万円(交通費別途支給)」といった案件を比較して考えてみようと思います。

単純に見ると「10万円>9万円」で、10万円の案件の方が直感的に手取りが多いだろうと感じるかもしれません。
しかし実は、その後に添えられた「交通費込み」という一言が、手取りに大きく左右することもあります。

特に給与が高めに設定されている案件ほど、立地が郊外・駅から遠いなど、アクセス面でやや不便なことも多く、中には交通費が3,000円〜5,000円程度かかるケースもありえます。

「交通費込み」とは、当たり前ですが報酬の中に交通費分が含まれていることを意味します。
そのため、たとえば通勤に5000円かかったとしたらその5000円は自腹で払わなければなりません。

一方で「交通費別途支給」の場合、交通費は実費で病院側から別途支給され、基本的には非課税のため、かかった分をそのまま受け取ることができます。
(ただ案件によっては交通費は⚪︎⚪︎円まで支給可と金額指定されていることもあります)

本記事では、医師にありがちな

  • 課税所得1,000万円程度が見込まれている医師が、
  • 新たに非常勤やスポットのバイトを探している状況で、
  • 交通費を5,000円と仮定し、
  • 「交通費込みで10万円の案件」と「交通費別途支給で9万円の案件」では、どちらが手取りで得か?

をシミュレーション形式で検証します。

シミュレーションで比較!どちらが得か?

常勤の給与や非常勤バイトなどを組み合わせた給与で課税所得1,000万円程度が既に見込まれている医師という前提条件で、さらに新たな案件で働こうとしている状況でシミュレーションしてみます。

現行の制度では課税所得が900万円を超え 1,800万円以下だと所得税が33%となり、住民税10%と合わせ、合計43%が税金で取られます。(※厳密には復興特別所得税額もありますが、少額で計算が細かくなるため今回は省いています)

そのためそれぞれのパターンでの実際の手取りは下記のようになります。

Aパターン:10万円(交通費込み)

  • 仕事による手取り → 10万円 ×(1 − 0.43)= 57,000円
  • 交通費5,000円を自己負担 → 最終的な実質手取り:52,000円

Bパターン:9万円+交通費別途支給

  • 仕事による手取り → 9万円 ×(1 − 0.43)= 51,300円
  • 交通費は非課税で支給 → 最終的な実質手取り:51,300円

比較まとめ

条件実質手取り
A:10万円(交通費込み)52,000円
B:9万円+交通費別途支給51,300円

AとBは実質手取りでわずか700円差しかありません。
つまり、高額案件のようにみえても交通費がかさめば実際の手取りが多くなるとは限らないことがわかります。

これなら高額の案件のためにわざわざ遠くに行って働くより、近場で交通費がほとんどかからないところか交通費別途支給の案件の方が良いかなと思うかもしれません。


課税所得によって「交通費込み」の損益はどう変わる?

交通費込みかどうかによる手取りの差は、課税所得が高くなるほど大きくなります
税率が上がるほど重く課税され、結果的に交通費込みのほうが損をする可能性が高まります。

下記に表でまとめました。スマホで見る場合は横画面にした方が見やすいです。

所得別の税率と比較表

結論
どちらが手取り多いか
課税所得税率(概算)A:10万円(交通費込み)の手取りB:9万円+交通費支給の手取り差額
交通費込み330~695万円約30%65,000円63,000円+2,000円(Aの方が得)
交通費込み695~900万円約33%62,000円60,300円+1,700円(Aの方が得)
交通費込み900~1,800万円約43%52,000円51,300円+700円(Aの方が得)
変わらない1,800~4,000万円約50%45,000円45,000円±0円(同じ)
交通費別途支給4,000万円超約55%40,000円40,500円−500円(Bの方が得)

課税所得が増えるほど両者の差が縮まり、「交通費込み」が不利になってくる構造です。


裏技:交通費込みの案件でもお得にする方法

ただ、交通費込みの案件でもその負担を少なくする方法があります。

1. 交通費を非課税に分けてもらう

報酬10万円をそのまま受け取るのではなく、病院側と交渉して
「報酬9万5,000円(課税)+交通費5,000円(非課税)」として分けて振り込んでもらうよう依頼します。
それにより交通費5000円が非課税となり、最終的な手取りを増やせます。

例:課税所得1,000万円(税率43%)の場合

  • 10万円(交通費込み) → 実質手取り:52,000円
  • 9万5,000円+交通費5,000円に分けて支給 → 実質手取り:54,150円

差額は2,150円にも! 一言の交渉で大きな違いとなります。

2. 控除制度を活用して課税所得を下げる

所得別の税率と比較表を見れば分かるとおり、課税所得が少ないほど実質の手取りは増えます。
そのため課税所得を減らすために色々な控除を使うことが重要です。

  • iDeCo:掛金全額が所得控除に
  • 医療費控除:年間10万円超で申告可能
  • 扶養控除:扶養家族がいれば控除対象に(なお配偶者控除は納税者が1000万円を超えると受けられないです)
  • 生命保険料控除・ふるさと納税:少額でも積み重ねで効果大

上記以外にも控除はあり、使える控除をフル活用すれば、バイト収入への課税影響も軽減できます。


まとめ:高額バイトこそ「交通費の扱い」に注意しよう

  • 「交通費込み10万円」は交通費が大きくなると、実質の手取りが下がり旨みが減ることがある
  • 高所得の医師ほど、この影響は大きくなる
  • 対策:
    • 交通費を非課税で分けてもらう
    • 使える控除を最大限使用して課税所得を減らす

金額が大きいからこそ、税金への意識が手取りに直結します。
次のバイト案件を選ぶときは、ぜひ「交通費の取り扱い」にも目を向けてみてください。

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