Apple WatchでII・III誘導も記録可能?臨床医が解説【STEMIの波形も紹介】

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はじめに

Apple Watchには、series 4以降のモデルで心電図記録機能が標準で搭載されています。

Apple Watchの心電図では通常は12誘導心電図のⅠ誘導に当たる波形となりますが、装着部位や手の配置を工夫することで、II誘導・III誘導の波形も取得可能であるという報告があります。

Ⅱ、Ⅲ誘導の代わりも可能!?

下記はThe Permanente Journal論文内のApple Watch測定の仕方の図です。標準的な使い方は図の左上の使い方ですが、左下や右下のように装着部位や手の配置を変えることでII誘導・III誘導も取得可能となります。

下記はこの論文内でSTEMIの患者に対して通常のECGと比較しています。青枠が通常のECG、赤枠がApple Watchの心電図の波形です。Ⅱ誘導の波形はやや不明瞭でしたが、Ⅰ誘導とⅢ誘導はApple watchの波形が正常の波形とは違うと感じるのではないでしょうか。

もちろん、これらは肢誘導のみであり、前胸部誘導(V1〜V6)がないため、すべてのSTEMIを捉えられるわけではありません。とはいえ、Apple WatchでST上昇やT波変化などの虚血性変化に気づける可能性があるのは、非常に大きな意味を持ちます。

ちなみに私自身も試してみました。

Ⅰ誘導と比べてⅡ、Ⅲ誘導では明らかに波形が変わりました。30秒間動かず記録する必要があるため、計測には少しコツが必要でじっとしていられないような方には測定は難しいかもしれませんが、簡易的な波形チェックとしては有効かと思いました。

12誘導全てApple watch心電図で可能?

2020年に発表されたAnnals of Internal Medicine誌や JAMA Cardiology誌の報告では、Apple Watchで9誘導心電図を記録する方法が提示されました。

下記はJAMA Cardiology誌の論文内での測定方法です(ちなみに、aVR、aVL、aVF誘導がないですがI、II、III誘導の情報から計算で求めることができます)。

Apple watch 心電図は診断精度に関しても高く、標準心電図を基準とした感度・特異度は以下の通りでした:

  • ST上昇:感度 93%、特異度 95%
  • 非ST上昇型心電図変化:感度 94%、特異度 92%
  • 正常波形:感度 84%、特異度 100%

流石に9誘導全部をApple watchで行うのはかなりの労力で、それなら普通に心電図をとったほうが早いし正確に思えますが、Apple watchの心電図機能のポテンシャルを感じられるのではないでしょうか。

ST低下やT波の変化といった虚血性所見をApple Watchで捉えられる可能性があり、心電図室での記録がすぐに行えない場面や、診察室での即時判断が求められるケースでも、Apple Watchは信頼できる補助ツールとなり得るでしょう。

Apple Watchの健康管理機能や活用法、選び方をまとめている記事もよければどうぞ 

👉 Apple Watchの心電図・血中酸素・睡眠時無呼吸と日常活用・選び方!医師が徹底解説!


参照

  • Avila CO. Novel use of Apple Watch 4 to obtain 3-lead electrocardiogram and detect cardiac ischemia. The Permanente Journal 23:19-025,2019
  • Cobos Gil MA. Standard and precordial leads obtained with an Apple Watch. Annals of Internal Medicine.172(6):436–437,2020
  • Spaccarotella CAM, et al. Multichannel electrocardiograms obtained by a smartwatch for the diagnosis of ST-segment changes. JAMA Cardiology. 5(10):1176–1180,2020
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